平野 敏夫 代表(横浜さくらボクシングジム)のインタビュー

横浜さくらボクシングジム 平野 敏夫 代表

横浜さくらボクシングジム 平野 敏夫 代表 (TOSHIO HIRANO)

『中京大学体育学部』卒業、同大学ボクシング部を創設。トヨタ関連施設でのアマチュア指導を経て、『京浜川崎ジム』にてプロボクシングの世界へ。マネージャーとして約20年間ジム経営の全てを担い、1992年に『横浜さくらボクシングジム』を設立。キッズボクシング大会の創設、マスボクシングの競技化など、ボクシングの裾野を広げる取り組みを牽引し続けている。(JR・京急 鶴見駅 徒歩約10分)

剣の道からリングへ。宮本武蔵の故郷で育んだ原点

出身は岡山県津山市です。宮本武蔵の生誕の地に近く、若い頃は剣道に強く惹かれていました。感動して繰り返し読んだのが吉川英治の小説『宮本武蔵』。剣の道と一本気な精神が、私の原点にあります。大学では剣道を続けるつもりで入学したのですが、アルバイトができず、生活を考えた結果として別の形で活動する道を探すことになりました。当時の大学にはボクシング部がなかったため、新しく部を立ち上げました。他の競技よりスタートが遅くても何とかなるという読みもありましたが、実際にやってみると、グローブをつけてリングの中で打ち合い、打ち勝つ「勝利者感」の深さに完全にのめり込んでいきました。体育学部で教員を目指していた当初の計画はいつの間か消え、ボクシングで生きていこうと決意するに至りました。

20年間で培った独立する力。小さいジムをあえて選んだ理由

大学在学中からトヨタ関連施設でアマチュアボクシングの指導を行い、県代表選手の育成や全日本社会人選手権への出場サポートを経験しました。そのうち「どうせやるならプロを育成したい」という思いが強くなり、専門誌『ボクシング・マガジン』のスタッフ募集欄を見てプロジムに飛び込んだのです。将来の独立を見据えて、あえて大きなジムではなく小さいジムを選びました。大きいジムだと役割が固定されて一つの歯車になりがちですが、小さいジムは「あれもやれ、これもやれ」という環境です。指導からセコンド、外部との交渉まで何でも任せてもらえた。そこでの20年間があったからこそ、独立後も困ることなく歩んでこられました。ジムは「京浜ジム」からのれん分けした「京浜川崎ジム」で、私はマネージャーとして経営を任されるようになりました。独立の際に、ジムの名前には迷いました。本当は「京浜横浜」としたかったのですが、すでに存在していたため、割とソフトな印象の「横浜さくらボクシングジム」という名前にしました。この名前にしたことで、どこか柔らかく、さまざまな方にご利用いただけていると感じています。

「なぜ」を教える。100人いれば100通りの指導がある

指導の基本に置いているのは「理論付けをして教えること」です。昔の教本には「こう構えろ」「こう打て」とは書いてあっても、なぜそうするかの説明がありませんでした。学生の頃から独学でボクシングを学んだ私は、その「なぜ」を自分なりに考え続けてきました。その積み重ねが、今の指導スタイルの根幹となっています。100人いれば、体格も運動能力もスピードも全員違います。基本は同じように教えますが、その先は一人ひとりに合った方法が必要です。背が高い選手にはリーチを活かしたボクシングを伝えるなど、個々の特性を引き出すことを常に意識しています。昔の選手の例えを出しても今の子供には届かないので、それぞれの目線に合わせた言葉を選ぶことも欠かせません。ジムにはかつて選手志望の人だけが来ていましたが、今は健康志向やダイエット目的の一般会員も増えました。選手と同じ厳しさで接すれば長続きしません。一般の方や女性の会員には、楽しみながら体を動かせる場を整えています。

子供の大会とヒットマスの競技化。ボクシング界に残した二つの革新

ボクシング界に貢献できたと自負していることが二つあります。一つは子供のボクシング大会です。2001年のスタート当初、小学生でボクシングを始めても中学・高校に部活がなく他のスポーツへ移ってしまう現状を変えたくて立ち上げました。子供の成長を考慮して減量を禁止し、健康診断を義務化するなど安全面にも徹底して配慮しました。この大会には後に活躍する井上尚弥兄弟、矢吹正道(本名・佐藤正道)、亀田和毅たちも横浜さくらジムのリングに上がっており、低年齢からスタートできる環境が日本ボクシングの国際的なレベルを大きく押し上げてきました。もう一つは、2013年に競技化した「マスボクシング」です。相手にパンチを当てない、打撃のない競技で、高齢化社会の中でボクシングを通じて社会貢献できないかと考えたことがきっかけでした。名称を「ヒットマスボクシング」とし、採点はカウンター方式で、最高齢は85歳の参加者がいます。1日で決勝まで行えるため、初戦で敗れた方同士の試合も組めるほか、努力賞や敢闘賞など多くの賞を用意しています。大会という目標が生まれることで継続的な運動が促され、参加者の健康維持にも一役買っています。

リングが変えた人生。一人ひとりの物語がここにある

ジムにはさまざまな背景を持つ方が来られます。不登校だった子がジムに通うことで人に慣れ、学校へ行けるようになった子もいました。心にエネルギーを持て余していた子が、ボクシングで気持ちを発散することで落ち着きを取り戻したケースもあります。静岡県から通い続けた高校生が後に国立大学へ進んだり、大宮から週末だけ足を運ぶ社会人もいました。私が今も心に残っているのは、1勝9敗という成績の選手です。決して器用ではなかったのですが、執念でスタミナ切れを誘い、やっとの思いで2勝目をつかんで、リングの上で号泣したその姿を見た時、勝者以上の深い感動がありました。リングとはそういう場所です。ボクシングには、競技を超えた力があると実感しています。ジムのブログ「ボクシング界の歴史」や「サボテンの花」には、そうした物語を数多く書き続けています。ぜひ読んでみてください。鶴見区で誰かの人生に寄り添える場所を、これからも作り続けていきたいんです。これからもよろしくお願いいたします。

 

※上記記事は2026年4月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

横浜さくらボクシングジム 平野 敏夫 代表 (TOSHIO HIRANO)

横浜さくらボクシングジム 平野 敏夫 代表 (TOSHIO HIRANO)

  • 出身地:岡山県津山市
  • 趣味・特技:多岐にわたる(剣道・読書など)
  • 好きな本:『宮本武蔵』(吉川英治)
  • 好きな映画:『若者たち』『大脱走』『ロッキー』『チャンプ』
  • 好きな音楽:フォークソング
  • 好きな場所:ヨーロッパ、ハワイ、沖縄の海、北海道の大自然

INFORMATION

横浜さくらボクシングジム

電話 045-511-1008
所在地鶴見中央2-6-7
最寄駅京急鶴見駅 徒歩7分、鶴見駅 徒歩7分、鶴見市場駅 徒歩13分
レッスン時間■プロ/アマチュア/練習生
[平日]12:00~22:00
[日曜・祝日]12:00~18:00
■女性の為の教室
[平日]10:00~11:30
定休日不定休
ジャンル ボクシング