PILE(パイル) 津田 賀央 代表 (YOSHIO TSUDA)
東京都市大学メディア情報学部卒業後、『東急エージェンシー』で10年勤務。『SONY』に在職中の2015年に長野県富士見町で『Route Design合同会社』を開業。2022年PILEを天王町に開業し今に至る。(相鉄線「天王町駅」 YBP口より徒歩1分)
働き方の原点を問い直して始まった「富士見 森のオフィス」

私は大学卒業後、広告代理店を経て『SONY』に入社しました。企業に勤めながらも、ふと「15年後もこのままの働き方でいいのか?」という疑問を感じ始めたんです。そのきっかけとなったのが、リンダ・グラットン著『ワークシフト』を読んだことでした。そこで2015年、縁もゆかりもない長野県富士見町に移住し、「富士見 森のオフィス」というコワーキングスペースを地元行政とともに立ち上げました。当時は、今ほどコワーキングスペースという概念が一般的ではなく、順風満帆とはいきませんでしたが、それでもコツコツと運営を続け、おかげさまで今年で10周年を迎えることができました。登録者は2000人を超え、「富士見 森のオフィス」を通して生まれたプロジェクトも200件以上になります。この実績から「この現象は他の場所でも再現可能なのでは?」という想いが芽生え、再開発が進む横浜・天王町での新しいチャレンジがスタートしました。
ただの作業場じゃない、秘密基地のような創造空間
2020年、相鉄さんに「富士見 森のオフィス」を見学いただき、横浜再開発の一環としてテナント開業のお話をいただきました。正直、都市部でやっていけるのか不安もありましたが、横浜で育った私にとって、地元の声を無下にはできませんでした。そして開業したのが、コワーキングスペース『PILE』(パイル)です。『PILE』という名前には“共同のスタジオ”という意味を込めています。ここは単なるデスクワークの場ではありません。映像制作などを大きなモニターで制作できる環境のある横で、油絵や水彩画が描けたり、木工やシルクスクリーンでTシャツを作ったり。最近ではレーザーカッターや大型プリンター、ミシンも導入しており、手を汚しながら創作できる空間に進化しています。音を出してもいいので、DIYや工具を使った作業も可能。自炊できるキッチンも完備し、24時間利用可能です。平日は個人事業主や会社員の方、週末は副業で創作する方々が集います。例えばバッグ職人さんや、紙芝居を版画で描く方、大学の教授や相鉄の職員さんまで、さまざまな背景を持つ方がこの場を活用しています。
人と人が重なる場所として

『PILE』の核となるのは「つながり」です。私たちが一番力を入れているのは、利用者同士が交流し、そこから新たなクリエイションが生まれること。横浜も3年目を迎え、利用者同士が自然と仲良くなり、一緒にご飯を食べに行ったり、新しいプロジェクトが生まれたりする場面を何度も目にしてきました。多様なスキルに触れることで、新しいものづくりに挑戦する方もいますし、仕事の受発注につながるケースも増えています。中には、動画制作や振り付け、映画撮影を手がける運営スタッフと利用者さんがコラボする場面もあり、『PILE』を超えたクリエイティブが動き出している実感があります。私の理想は「オーガニックなコミュニティ」。コミュニティは“作るもの”ではなく、“育むもの”だと思っています。私たちは土壌の中にいるミミズのような存在で、良い土を耕すことが仕事。そうしていれば、自然と良い種が芽を出し、強くしなやかに育っていくと信じています。
地域と育ち合う、シニアや子どもも巻き込んだコミュニティ
『PILE』を通じて、地域とのつながりも着実に深まってきました。例えば、ある日オープンスタジオにご家族がいらっしゃり、お子さんがこの場所をとても気に入ってくれたんです。本来は小学生の会員制度は設けていませんが、お母さんが会員になることで親子で利用できるようにしました。その子は多くのアーティストと接しながら創造力を育み、今では立派なクリエイターに。一方で付き添いだったお母さんも、いつの間にかワークショップを開催するアーティストに変化していきました。現在では地元イベントで『PILE』の名義で出店するなど、地域にとって欠かせない存在になっています。私自身も商店街に複数加入していて、商店主さんたちとのつながりもどんどん増えてきました。保土ケ谷区は「何もない」と思われがちですが、実は面白い商店街や素敵な人たちがたくさんいます。だからこそ、この地域の魅力をもっと引き出していけたらと考えています。
「PUSH FOR CREATION(P4C)」で未来を育てる
現在私たちが力を入れている取り組みの一つが、若手アーティスト支援プロジェクト「PUSH FOR CREATION(P4C)」です。これは公募で、選考を通過したアーティストが『PILE』を3ヶ月間自由に使用できるプログラムで、その成果として「保土ケ谷高架下ART LINE」というパブリックアート展を開催します。この取り組みは、2025年の保土ケ谷区政100周年にもつながる象徴的なイベントとして育てていきたいと考えています。日常的に人々が通る高架下にアートがあるという体験は、地域住民にとっても楽しみになるはずです。将来的には高架下に限らず、地域全体に広がっていくような展開を目指しています。若手アーティストにとっては、自身の表現を発表する貴重な機会となり、地域にとっても文化的な価値を生み出すことができる。『PILE』は、そんな「芽吹きの場」であり続けたいと願っています。私が高校生の頃から遊びに来ていたこの保土ケ谷の地で、今こうして創造の拠点を作ることができているのは、とても嬉しいことです。創作は、人生に彩りを与えるもの。年齢や職業に関係なく、誰もが自分らしく表現できる空間が『PILE』でありたい。これからも、地元に根ざした活動を続けながら、アートやクリエイティブを通して人と人をつなぎ、新しい価値が生まれる場を育てていきます。皆さんの「やってみたい」という気持ちを、ぜひ『PILE』に持ってきてください。そして一緒に、まだ見ぬ創造を形にしていきましょう。
※上記記事は2025年6月に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。

PILE(パイル) 津田 賀央 代表 (YOSHIO TSUDA)
PILE(パイル) 津田 賀央 代表 (YOSHIO TSUDA)
- 出身地:横浜市港北区
- 趣味:マウンテンバイク、スノーボード、音楽制作、映像制作
- 好きな場所:八ヶ岳、横浜みなとみらい
- 好きな音楽:テクノ、ハードコア
- 好きな映画:『2001年宇宙の旅』
- 好きな本:『ワークシフト』リンダ・グラットン著
- 好きな言葉:『試行錯誤』

