レアール訪問歯科横浜鶴見院 上田 隆介 院長 (Ryusuke Ueda)
和歌山県出身。東京歯科大学を卒業後、東京歯科大学千葉病院総合診療科および東京都内のクリニックで研鑽を積む。医療法人社団 FOUR SONSオータワ歯科クリニックにて勤務を続けながら、2024年5月にレアール訪問歯科横浜鶴見院を開院。
祖父の認知症がきっかけに
私が生まれた年に、父が自宅を兼ねた歯科医院を開業。昼夜を問わず、患者さんが訪れる環境でもあり、小学校に入るまでは祖父母の家に預けられることも多くありましたが、父が地域の方に感謝され、頼りにされている姿が強く心に残っています。成長するにつれ、医学部に進んだ姉の姿に影響を受けて「自分も医療の道に進みたい」と思うようになり、尊敬する父の背中を追いかけて、歯学部への進学を決めました。

大学4年生のとき、認知症が進んだ祖父の元を訪れた時、お皿のうえに鮭と入れ歯が並んでいるという衝撃的な場面を目にしました。入れ歯があるのに使わず、食べられるはずのものが食べられない。歯学部に通っているのに、家族のために何もできない自分への悔しさと無力感が押し寄せ、この体験が高齢者の歯科治療、そして嚥下や認知症の歯科治療へ興味を持つ大きなきっかけになりました。
嚥下という分野に出会い、訪問診療へ
家族の姿から「歯の治療だけが歯科医師のすべてではない」と気付いたことで、医療の現場をもっと知りたいという気持ちが徐々に強くなっていきました。基礎知識を身につけていても、診断に基づき適切な治療を実践する技術がなければ歯科医としては不十分。そんな考えが芽生え、友人の多くが飲食店などをアルバイト先に選ぶなか、私は大学4年生から歯科医院でのアルバイトを始めました。当時お世話になった院長先生は患者さんへの向き合い方が本当に素晴らしく、人としてどうあるべきかまで教えていただいた大切な時間でした。今でもその院長先生とは交流が続いています。
歯科医になってからは、嚥下を専門とする先生のもとで知識や技術を深めたり、勉強会に足を運んだり。歯科医師が10人いたら10通りのやり方があると思っていたこともあり、常勤の医院だけでなく、大学時代のアルバイト先での診療、母校の総合診療科で後進の指導にあたるなど、複数の現場を行き来しながら研鑽を積みました。それぞれの歯科医院で質の高い治療や患者さんへの寄り添い方を学び、大学に関わり続けることで歯科の最新の知識や考え方にも触れることができました。一方で、外来と訪問を同時にこなす働き方には、次第に限界を感じるようにもなっていきました。外来を終えて急いで道具を詰め込み訪問へ向かい、また医院に戻って外来に出る。その慌ただしさは、患者さん一人ひとりと丁寧に向き合う時間をどうしても奪ってしまう。「このままでは、自分にとっても患者さんにとってもベストな診療ができない」。そう思い、訪問診療と外来診療の日時を完全に分けて配置した診療形態を作りました。
訪問診療だからこそできることがある
訪問診療が多い当院では、歯周病の治療はもちろん、口腔ケア、栄養相談、嚥下リハビリまでワンストップで提供しています。クリニック以外の場所で診療するためのポータブルユニットや喉の状態を精密に検査できる嚥下内視鏡などをそろえていますので、ご自宅でも外来と遜色ない診療が可能です。
訪問診療は、私たちが患者さんの生活のなかに足を踏み入れる診療です。外来のように“整った場所に来てもらう”のではなく、“生活そのもののなかで診る”。入れ歯を作ったあとに実際に家で食事をしている様子も見ることができるのも大きいですね。「普段どんな食事をしているのか」「どんな習慣があるのか」といったことが、嚥下診療にはとても重要ですから。食事面や栄養面で困ったことがないかなどもお聞きして、栄養改善につながる診療を意識しています。

また、ご家族との会話も大切にしています。負担をかけずに続けられるリハビリを一緒に考え、ご家族にも「一緒にやってみませんか」と声をかけることも多くあります。マイナスの言葉は使わず、前向きな気持ちになれる言葉選びを心がけています。
食べる力”が戻ることで広がる未来
本当は口から食べられる力が残っているのに「胃ろうだから食べられない」と思い込み、最初から諦めてしまう方は少なくありません。「食べられない」という状態は栄養が取れないというだけでなく、気持ちが沈み病気の進行を早めることさえあります。ですが、嚥下リハビリを行うことで改善が見込めるケースもあり、好きだったものをもう一度口から味わえた瞬間、涙をこぼして食べ続ける方もいらっしゃいます。また、口だけでなく喉にも汚れが溜まることがあり、痰が絡んで苦しさを訴える方も。そうした部分のケアを行うだけで状態が大きく改善することもあるんですよね。
口から食べられるようになることは、栄養状態や体力の向上にもつながります。寝たきりだった方が背中を起こせるようになり、やがて立ち上がれるようになれば、介護される側だけでなく、介護する側の負担も減り、床ずれの心配がなくなるなど生活全体が改善していく。「食べる力」は、人生に直結する力なんだともっと多くの方に知っていただきたい。誰もが自宅で不自由なく過ごせるようになってほしいと願っています。
ただ、嚥下の専門家はまだまだ少ないのが現状です。嚥下治療を歯科医が行うものだと知らない人も少なくありません。だからこそ私は、嚥下治療の可能性をもっと世の中に広めたい。動画を撮影してHPで公開したり、学会で学んだことを積極的に発信したりして、困っている人が“アクセスできる場所”を増やしていきたい。0から1になるだけでも、人生は大きく好転する。そう考えて日々、活動しています。
これから目指すもの——地域全体で“食べる”を支えるために
今後は、口腔ケア・栄養・嚥下リハビリの三位一体での支援をより強化し、地域全体で患者さんを支えていく“地域包括ケア”にさらに貢献していきたいと考えています。将来的には、医科と歯科と看護介護職、リハビリ職が連携する体制づくりにも挑戦したいですね。多職種がつながることで、もっと広い視点で患者さんの生活を支えられるようになるはずですから。
当院の理念は「関わる皆さんを笑顔にする」。これからも生活のなかに入り込み、“食べる力”を取り戻すお手伝いをしながら、一人でも多くの方に笑顔が広がるような診療を続けていきたいと思っています。パッションだけは無限に持っていますから!
※上記記事は2025年11月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

レアール訪問歯科横浜鶴見院 上田 隆介 院長 (Ryusuke Ueda)
レアール訪問歯科横浜鶴見院 上田 隆介 院長 (Ryusuke Ueda)
- 出身地:和歌山県
- 趣味:学生のころは空手とキックボクシング。今は家族旅行
- 好きな本:専門書
- 好きな言葉:打つ手は無限
- 好きな音楽:yui
- 好きな場所:海岸沿い

