清水歯科 清水 義央 院長 (YOSHIHISA SHIMIZU)
神奈川県出身。1988年に清水歯科を開院。プログレッシブ・ロック・バンド KENSOのギタリスト兼リーダーとして音楽活動を行いながら歯科医療に従事するという二足のわらじの生き方を実践。
音楽と歯科医、二つの世界を行き来しながら

僕は、歯科医として医療に従事する一方でプログレッシブ・ロック・バンド KENSOのギタリスト兼リーダーという、ミュージシャンとして活動する一面を持っています。中学生時にテレビから流れてきたビートルズに強い衝撃を受け、そこから一気にギターにのめり込み、将来の夢はミュージシャンになることでした。ですが、「音楽なんてもってのほか」という考えの父からは「医学関係の仕事に就け」と。その流れのなかで歯科医の道を選びました。ただ、歯学部に進学しても音楽への思いはずっと持ち続けていました。「音楽か歯科医か」という「どちらかを捨てる」という選択ではなく、音楽を続けながら歩める道として歯学部を選んだ、という感覚に近いかもしれません。結果的に、その選択が今の自分につながっていると感じています。
音楽を続けながら模索した歯科医への道
とはいえ、歯学部では周りがみんな歯科医になるための準備を次々としていくわけですから、「音楽をやりたい気持ちのまま、このまま歯科医になるのか?」という大きな葛藤の時期もありました。音楽活動の面では、ちょうど同世代のカシオペアとかサザンオールスターズが次々デビューしていった時期でもあって。そんななかで、自主制作で出したアルバムが少し認められたんですよね。それが、ちょっとした転機になって「音楽も、歯科医も両方やってみよう」という方向に気持ちが決まりました。卒業してからも、僕の周りには優れたメンバーが奇跡のように集まってきてくれて、彼らに力を借りながらずっと活動してきた感じです。
歯科医になったきっかけは、親に言われたから。そこには「自分がなりたいもの」と「親が希望するもの」の間の葛藤がありました。でも、本を読んだり、いろんな人と知り合って話を聞いたりすると、本当は別の道に行きたかったけど、いろいろあって違う道に進んだ人って、結構いるんですよね。医者で作家の人も多いじゃないですか。それこそ、手塚治虫さんも医者ですし。いろんな背景を持った人がいる。そういうことを大人になって知るうちに、「そんなに特殊なことでもないのかもしれない」と思うようになりました。
診療のときは歯科医に徹して真摯に向き合う

当院の開院は、1986年。当時は、歯医者さんって開業したら患者さんが次々と来てくれた時代でもあったんですけど、歯科医が増えるにつれて、そういう時代でもなくなってきて。そんななか、自分が40代になったころにふと気づいたんですよね。「僕は兼業歯科医なのに、こんなに患者さんが来てくれているじゃないか」と。なんてありがたいことなんだろうと思ったんですよね。音楽は自分のやりたいことではありますが、医療は人の役に立つこと。単純で当たり前のことですけど、それを改めて実感して「もっとちゃんと、この職業について考えないとダメだな」と思うようになりました。
どっちに比重を移した、という話ではなく、僕の中では混ざっている感覚。ただ、患者さんと接している時は歯科医に徹することを心がけています。患者として来院されたファンの方にサインを求められても、ここではしません。欲しいなら受付にCDを置いてもらって、診療が終わってからサインして次回渡す、という形にしています。ここでの僕は歯科医ですから。
歯科心身医学との出会い
ここで開業して40年近くが経ちました。当時40歳だった方は、もう80歳。長く通って来てくださる方も多く、今は高齢の患者さんたちのメンテナンスが中心になっています。それもあって今は「おいしいものを食べて生きる」ための口の状態を支えたい、と考えています。そこに関わってくるのが、歯科心身医学です。もともと、知的なロックミュージシャンがフロイトのような精神医学者の思想を歌詞に持ち込むことがあり、その歌詞を理解したくて、学生時代から精神に関する本をたくさん読んでいたんですね。大学を卒業後、岡山大学医学部の脳代謝研究室に、研修生として籍を置いていた時期もあり、精神科の先生が研究している場も身近に見ていた経験がありました。そんな背景があったなかで、極度の歯科恐怖症や何かしらの病を抱えている方が、当院にもちらほら来るように。友人の精神科医や歯科心身医学を学んでいる同級生に教えを乞いながら「自分もそういった患者さんをきちんと診られるようになりたい」と学びを深めてきました。
歯科心身症は、歯や歯肉、顎関節に歯科的な問題がなくても、それらに症状が出てしまうこと。例えば、治療してもかみ合わせがおかしい、何回作っても義歯があわないといったときなど、心身症かもしれない、という可能性を考えてみてもいいのではないか、と思っています。ただ、自分は精神科医ではないですから、心を診ようとはしません。口のなかを見せにきて心の問題だと言われるのは、患者さん的にはイヤなことだと思うんですよね。あくまで歯を診て、そのうえでこういった可能性もある。そして、それはあなたが初めてではない、ということをお伝えするようにしています。そして、心の問題については専門機関に紹介するなどきちんとネットワークも構築しています。
「あなたはどうしたい?」を軸に、最後まで寄り添っていく
患者さんに接するときに大切にしているのは、ちゃんと話をすること。本当はどうしたいのか、を隠している患者さんも多いのでリラックスした雰囲気を作ったうえで、きちんと説明して「あなたはどうしたい?」と聞くようにしています。もちろん全て対応できるわけではないですし、患者さんの希望が素人判断で危ういこともあります。それでも、例えば「抜きたくない」という気持ちがあるなら、その歯を残しておくリスク、細菌を飲み込んでいることによる誤嚥性肺炎のリスク、他の疾患に及ぼす影響などを説明したうえで、様子を見るという選択もあるのかなと。
そして、もう一つ大事にしているのが「いつでもここにいる」という姿勢です。治療して終わりではなく、何かあったらいつでも話を聞きますよ、ということ。僕でよければいつでも、という感じですね。いつまでここで歯科医ができるのか、という年齢的な問題はありますが、今通っている患者さんをなるべく不安にさせないように対応していきたいなと。訪問診療についても、今は妻が担ってくれていますが、手が足りないときは自分が手伝うこともありますし、当院に通ってくださっている患者さんに最後まで安心していただけるような診療を続けていきたいと思っています。
美味しいものを食べるのは人生の楽しみの一つ。だからこそ、歯を大事にしてほしいですね。これからも、なるべく好きなものを食べて元気に過ごしていただけるようなサポートをしていきたいです。
※上記記事は2025年12月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

清水歯科 清水 義央 院長 (YOSHIHISA SHIMIZU)
清水歯科 清水 義央 院長 (YOSHIHISA SHIMIZU)
- 出身地:神奈川県
- 趣味:音楽
- 好きな本:萩原朔太郎や谷崎潤一郎など
- 好きな映画:「ノスタルジア」(アンドレイ・タルコフスキー監督)
- 好きな音楽:'70年代ロック
- 好きな場所:バリ島

